2024.09.08
共同住宅の火災報知機について正しく理解出来ているだろうか。
共同住宅は建物の構造により特例基準もあり、その基準は何度も法令改正されてきた。だが、共同住宅が常に消防法改正後の基準に適合させなければならない建物ではない為、世の中にはその建物が建った時期によって様々な火災報知機のシステムが採用されており、防災屋を悩ませる種となっている。
思いつくものを書き出すだけでも以下のようなシステムがある。
❶ 一般の自動火災報知設備
❷ 住戸用自動火災報知設備(特例)で外部試験無し
❸ 住戸用自動火災報知設備(特例)で外部試験有り
❹ 住戸用自動火災報知設備(特例)の❷❸の仕様で、共用部に非常警報設備がある
❺ ❹のシステム構成で非常警報設備の代わりに自動火災報知設備が設置されている
❻ 共同住宅用自動火災報知設備(特例)
❼ 特例のシステム構成でありながら、免除可能な設備(発信機・消火栓など)が設置されている
❽ 特例仕様だが、住戸内感知器が自動試験機能付きで外部試験が存在しない
❾ 一般の自動火災報知設備だが、住戸内インターホンが鳴動する(移報端子仕様)
❿ 一般の自動火災報知設備だが住戸内感知器が外部試験に対応している
⓫ 11階以上のみに一般の自動火災報知設備が設置されている(10階以下は住警器など)
などなど。
さらに、特例仕様の共同住宅で使用されている遠隔試験機能付きの感知器(外部試験対応)もメーカーによって特徴が違う。
パナソニック製:ダイヤルでアドレス変更(アドレス設定器無しで施工可)、φ60の小型埋込タイプもある
ホーチキ製:1番感知器にその部屋の総個数を設定する
ニッタン製:Lに一次側(中継器側)と二次側(終端器側)が存在する(誤結線で誤動作する)、アドレス設定無し
能美防災製:その部屋の最後の番号の感知器に終端設定をする
こんなことを理解しながら点検・工事に当たらないといけないので、他の建物に比べて共同住宅は設備が非常に難しいと言えるだろう。
その難しさ故なのか、間違った解釈で点検している事例も少なくない。
例えば、共同住宅用自動火災報知設備の外部試験において、インターホンの電源の落ちている住戸(空室等)は外部試験が出来なくても仕方ないと思っている人が多いようだ。それは住戸用自動火災報知設備と勘違いしているのだろう。住宅用自動火災報知設備では所謂“住戸完結❞システムなので、インターホンの電源が落ちると外部試験は出来ないのだが、共同住宅用自動火災報知設備ではインターホンを停電時も生かすための非常電源が存在する為、インターホンの電源が落ちていても外部試験が出来る仕様なのだ。
さらには、この外部試験を入室出来なかった部屋のみ実施している例も多くある。これも間違い。外部試験は全住戸実施が必要であり、むしろ入室しての加熱試験の方が免除が可能だったりする。(その免除規定は点検票の欄外の備考書きに書いてある)
弊社では、入室しての点検を実施しているマンションにおいても、全住戸の外部試験を実施し、共同住宅用自動火災報知設備の場合は1戸1戸外部試験した際に住棟受信機(管理室の受信機)に火災発報が出るかの確認を徹底している。これが出ない場合には火災時に他の近隣住戸のインターホンを連動鳴動させられないことを意味するからだ。
また、この住棟受信機の火災発報が蓄積に入らないことも確認してほしい。住戸からの火災信号の入力は蓄積無しで即時発報する必要があるのだが、この蓄積設定の不備がもの凄く多い。私が今までに点検した物件の半数以上がこの不備が有ったことを付け加えておく。
難しい共同住宅の攻略のためにはこれも地道な経験値の積み上げしかないと感じている。弊社はこの共同住宅の経験値を積み上げる目的もあり、リフォーム工事を積極的に請け負っている。自社で点検するマンションは限られているが、リフォーム工事でご依頼を頂くマンションはそのほとんどが初見だから、その経験は代えがたいものになる。
毎年50件以上のリフォーム現場があるが、未だに出会えていない火災報知機のシステムや機器に出会うべく、これからも現場に飛び込み続けたいと思う。