2026.03.29
無窓階とは-
『避難上または消火活動上有効な開口を有しない階』のことをいう。
有効な開口を有する階とは、10階以下の階では、直径1m以上の円が内接出来る開口または幅75cm以上高さ120cm以上の開口が2以上あり、直径50cm以上の円が内接出来る開口部の合計面積が床面積の1/30を超える階をいう。さらにはその開口下端は床面から1.2m以内で開口部の前は1m以上の空地を要し、窓が割れる構造のものである必要もある。これらの開口が不足している階を「無窓階」と呼ぶのである。

先日、知り合いの経営する飲食店で無窓階判定された事案があった。窓が大きく育ってしまった植木によって開口として見なされず、無窓階になるとのこと。それも植木を剪定する等の措置をすぐに講じない場合、即刻違反物件として公表されるというのである。その理由は「無窓階判定により屋内消火栓未設置となり重大な違反となるから」。
この飲食店は300㎡程の小規模な飲食店で火災報知機の設置基準がギリギリかかるくらいの大きさである。その建物に「植木を即刻剪定せよ!」そうでなければ「屋内消火栓を設置せよ!」とは随分と厳しいなと感じるだろう。
しかし、この無窓階判定に関して、消防設備の設置基準はメチャクチャ厳しくなるのだ。今回の(3)項ロ飲食店で言えば、普通階判定の場合、消火器150㎡以上・自動火災報知設備300㎡以上・屋内消火栓設備700㎡(準耐火1400㎡・耐火2100㎡)以上で良かったものが、無窓階判定の場合、消火器50㎡以上・自動火災報知設備100㎡以上・屋内消火栓設備150㎡(準耐火300㎡・耐火450㎡)以上という基準に変わってしまうのだ。そのため、150㎡以上で屋内消火栓設備の設置基準にかかったため、屋内消火栓未設置という重大な違反とされてしまったのである。これが意外と盲点となりやすい。飲食店でやりがちなのが、窓の前に客席を置いて有効な開口を塞いでしまうケース。さらには暗さの演出のため、窓自体を封鎖してしまう事例も多い。それで万が一無窓階判定されるとこれは大騒ぎになる。普段から消防設備点検をちゃんと実施していたとしても、無窓階になっていることは消防設備点検ではなかなか気付けない場合も多く、大抵は消防の立入検査で発覚するケースが多いのだ。
「でも窓際の客席は変えたくないから屋内消火栓を設置するしかないな。どれくらい費用かかるの?」と聞かれて、「屋内消火栓のポンプを設置するとなるととんでもない金額ですが、屋内消火栓の代わりになるパッケージ型消火設備があるんで100万円くらいですかね」だなんて・・・間違えても答えてはならない。屋内消火栓設備の代わりに設置できるとされるパッケージ型消火設備は❝無窓階には設置出来ない❞のだ。その理由は、パッケージ型消火設備は屋内消火栓設備の代わりとは言っても、決定的に消火能力が低いためである。パッケージ型消火設備の消火薬剤量は80ℓでは消火時間は約3分ほど。屋内消火栓のように継続的な消火が出来ないのだ。それでいて火災時の危険度が高い無窓階であるため、安全確保の観点からも簡易的なパッケージ型消火設備は認められないのである。
無窓階判定といえば今までも色んなケースがあった。
準耐火の建物で無窓階となる2階が250㎡程の2階建ての事務所があった。集会場((1)項ロ)の用途として使用したいとの相談だったが、事務所では400㎡以上で必要とされていた屋内消火栓設備が用途が変わった瞬間、200㎡以上で必要となってしまったケースである。有効な開口を作って普通階にするという方法もあったが、結局、お客様はこの物件を見送る判断をすることとなった。
またある物件では、自動火災報知設備の更新工事の消防検査で急に店舗の2階部分が無窓階判定を受けた。消防職員曰く「開口部の下端が1.2mを超えているため、有効な開口がなく無窓階」だと。確かにおっしゃる通り、窓は沢山あるが有効な開口となるものはなかった。しかし、竣工時から変わらない窓で普通階として判定されていたのである。竣工当時から熱式感知器であり、誘導灯は設置されていなかった。それを「無窓階判定なので、感知器は全て煙式に交換、誘導灯新設が必要」と。熱式感知器で更新していたため、まさに寝耳に水であった。
さらには、とある工場の敷地に入る門が1.2mを超えるため、建物全体が無窓階だと言われたケースもある。団地のベランダの柵が1.2mを超えて無窓階になるため、ベランダにブロックを積んで柵が1.2m以内になるように是正指導されたというケースも聞いた。門やベランダの柵まで開口の障害物になるのか・・・。消防による見解も違うため、これは気を付けなければならない。
いずれにしても有効な開口が不足している無窓階に関しては、火災時の危険性が高い故に消防設備の設置基準も厳しくなっている。そう考えれば、消防設備点検でも有効な開口を塞がないよう積極的に声掛けが出来たらとは思うが、そもそも設備自体の点検において設備に関係ない窓を気にすること自体がなかなか難しい。これは今後の課題の1つと言えるだろう。