2025.07.10
故障した消防設備を修理する際に、今あるものを正常な状態に直すのは当然のことである。しかし、そもそも❝今あるもの❞が本当に必要なものなのか。本当にその修理方法しかないのか。それを考える人は少ないかもしれない。
ふと気付くと、私はここ最近、敢えて元々の消防設備のスペックを変える提案をするケースが増えていることを感じた。
ある時、火災報知機のR型受信機の故障で数千万円の予算組みを考えているという案件の話があった。
その建物の点検票を見た瞬間、延べ面積が数千㎡だった為、❝本当にR型システムの必要があるのか。❞と疑問が湧いてきた。そして実際に現地を確認すると、感知器等の端末機器は全てP型機器で、R型の利点は幹線の本数が少ないことくらいだったのだ。これならP型システムに変更して幹線を引き直しした方が圧倒的に安く済む。R型受信機本体交換だけで数千万円かかるところをP型システムに変更すれば、受信機は数百万円だし、端末機器を全て更新しても予算内でかなりのお釣りが出る計算だ。この提案なら今の数千万円の予算内で、火災報知設備どころか他の全設備の不具合改修まで賄える金額に収めることが出来るのだ。
またある時、火災報知設備の受信機更新と防火戸用の感知器の更新見積の依頼があった。この建物では火災受信機と防火戸用の連動制御盤が別々に設置されており、火災受信機より連動制御盤が10年程年式が新しかったが、どちらの盤も更新時期は過ぎている状態だった。故障した火災受信機を交換し、10年経過した防火戸用の感知器を更新したいとの依頼だったが、敢えて❝2台の盤を1台に統合する❞提案をさせて頂いた。いずれ連動制御盤も更新することになるのだから、この機会に火災報知機と防火設備が一体となった『火災受信機複合盤』での更新をした方がいい。統合する為に配線工事も発生するが、この先を考えたら結果的にコストも抑えられるのだ。この提案でご依頼を頂き、設備を一新することに成功した。
またまたある時、スプリンクラー設備の補助加圧ポンプが昇圧しない案件があった。他社では単純にポンプ更新を提案されていたが、ポンプ自体は正直まだ使える状態と言えた。設置から30年を経過し、このスプリンクラー設備のメインポンプの更新も迫っていたが、併設されている屋内消火栓ポンプと兼用ポンプにする案や、パッケージ自動消火警戒が可能ではないかという案も挙がっており、今この補助加圧ポンプの交換は避けたいところであった。昇圧しない理由がサクション側のピンホールが考えられたが、吸い上げるサクション管の長さが5m近い構造になっていたため、今後のポンプの機能低下を考慮して水源水槽を切り替える❝改造案❞を提案した。既設呼水槽(50ℓ)を水源水槽(120ℓ)に交換し、補助加圧ポンプ直近に水源水槽を設置する提案である。勿論消防署への確認は必要だが、ポンプ性能上も理論上も可能な設計であり、長い目で見れば無駄にコストをかけない改造案を提示することが出来た。
余計なお金はかけずに何とか設備を生かせないか。更新するにしても費用のかからない適切な提案は出来ないか。そう考え始めると色んなアイデアは浮かぶのだが、❝それが本当に法令上問題無いのか。技術的に可能なのか。❞当然ながらそこまで裏取りをする必要があるし、手間も時間もかかる作業でもある。それ故に単純な更新提案するだけの選択をしがちではある。でもその苦労を惜しまず出来るかどうかが、弊社が他社と差別化出来るポイントであるとも自負している。他社には出来ない提案が出来る会社を目指して、今日も挑戦は続く・・・。