2024.09.16
非常コンセント設備。消防活動を支援する設備として設置され、消防活動で使用する電動工具等の電源を供給する役目を負っている。
この非常コンセントが❝正常に機能しないのに点検でも気付かれない❞という事例があることを、消防点検に携わる人ですらほとんど知らない。点検基準をすり抜けたそのヤバい不具合をここに紹介したい。
この❝正常に機能しないのに気付かれない理由❞とは何なのか。それは点検時に実際に電動工具等を使用せず、テスターによる電圧測定で終わってしまうからである。とはいえ、その点検方法は正しい。厄介なのは、正しい点検方法で正常な電圧が測定出来ているのに、実際には正常に使用が出来ないということだ。致命的な不具合が点検基準通りの点検では気付けずに、不具合がうまいことすり抜けてしまった事例と言える。
この不具合は、本来表示灯回路に接続するべきヒューズを、非常コンセントの電源回路に接続してしまうことで起きてしまう。(写真参照)
私は今まで(R6年9月現在まで)に、4件のこの施工不良を是正してきた。そのうち3件は竣工時から10年以上、正常に使用できない状態だった。もう1件は新築だったので、施工業者に是正してもらうよう管理会社様に依頼した。そして後日、施工業者に是正させた際の言い訳として「このヒューズをどこに付けるか分からなかった」と言っていたと聞いて衝撃を受けた。表示灯回路を同じ電源から分岐する場合には、非常コンセントの電源回路が影響を受けないように、表示灯回路側にヒューズを設置するのだが、このヒューズを訳も分からず電源回路に繋いでしまうのだろうか。
この施工不良の場合、実際に電動工具等を使用するとどうなるか。ヒューズがだいたい2A程度なので、使用電流が10Aの電動工具を使ったらその瞬間に1発KO!ヒューズが飛んで電圧は無くなってしまう。これが実際の消防活動で起きてしまったら・・・このヤバさを分かって頂けただろうか。
非常コンセントの話題ついでにもう1つ。非常コンセントの蓋に付いているフックをご存知だろうか。
このフックに何の役割があるのかを理解せずに点検していることも多いようである。非常コンセントに電源コードを接続して電動工具で消防活動に向かおうとしていることを想像すると、その答えが見えてくるかもしれない。・・・昔、掃除中に掃除機のコードを強く引っ張ってコンセントを曲げてしまった経験がある私はこのフックの大事さが分かる。そう!コンセントの抜け防止の役割を持っているのだ。このフックに電源コードを1周させることで、電源コードを引っ張ってもコンセントが抜けなくなるわけだ。
実際に設備を使用する状況をイメージして点検することが大事であるが、この非常コンセントはまさにそのイメージが無いとただの電圧測定するだけの設備と化してしまうから注意したいところ。点検者の方はちょっと手間だが、一度全数の非常コンセントの蓋を開けて、中の電源回路を確認してみて欲しい。知られていないけど一番ヤバいこの不具合を根絶するために、非常コンセントといつもより向き合う時間を作って欲しいと願う。