2025.01.11
消火器の機能点検。
抜き取りによって消火器を実際に放射したり、内部の機能の確認を実施する点検のことである。
例えば、粉末加圧式消火器の場合、製造年から3年経過してから8年経過までの5年間(計10回)の点検において、この機能点検を実施することとなる。また、粉末蓄圧式消火器の場合には、製造年から5年経過してから10年経過までの5年間(計10回)という期間となる。加圧式にあっては消火器のキャップを開けて中身の確認をして再度元の状態に戻すことは大した問題ではないのだが、蓄圧式にあっては常時消火器内部に圧力がかかっている為、内部の圧抜きを行なってキャップを開ける必要があるし、再度元の状態に戻すには圧力の再充填が必要となってしまう。実はこの蓄圧式消火器の機能点検が防災業界を騒がしているのだ。
粉末消火器は、能力が高くて安価である為、多くの建物で設置され、その大半を占めている。その中でもかつて主流だったのが加圧式。加圧式は使用時にレバーを握って加圧ボンベを開封することでその圧力で薬剤を放射する構造となっている。この構造故に、使用時に初めて本体容器に放射用の圧力がかかる為、腐食等で圧力に耐えられない本体容器が破裂する事故が多発。平成21年頃に負傷者を出す事故が立て続けに起きたことを受けて、平成23年には消火器の点検に関する規定が大きく改正されたのだ。それから主流になっていったのが蓄圧式消火器。常時放射に必要な圧力が本体容器にかかっている為、使用時の破裂事故の危険性はなくなった。だが、この蓄圧式消火器の機能点検が現実的に実施困難であり、消防法が現場状況に則していない顕著な例としてその対応が業界を騒がせているわけだ。
蓄圧式消火器の機能点検には、先に述べたように❝圧力の再充填❞が必要になるのだが、充填するための機材を揃えて現場に行くこと自体が困難であるし、その作業をするくらいなら新しい消火器を放射した消火器の代わりに設置すればその方が手間もコストがかからない。だからわざわざ充填する機材を揃える防災業者も少ない。そして機能点検の代わりに消火器交換を提案する業者が多くなるのも当然と言える。ただ、この交換対応が果たしてコンプライアンス的にどうかと言われると所謂❝グレー❞という話になるだろう。
この消火器交換を、本来の消火器の機能点検とは言えないとして認めない消防署があるのも事実である。彼らは消火器の再充填に手間やコストがかかっても、それを建物の管理権原者側で負担すべきと言うのである。しかし、それは消防法が現場に則していないだけの話で、現実を知らないナンセンスな主張だと私は考える。仮に手間をかけて消火器を再充填したとして、充填した数日後に圧が漏れてしまったケースもあるし、キャップ開放時の湿気により薬剤が固化してしまったケースもあるし、まして人材不足が顕著なこの業界にあって消火器を再充填し再度設置することに作業人員を取られては、もっと防災上大事な作業(改修工事等)が後回しになってしまうだろう。この圧漏れを防ぐには正直メーカーで再充填してもらうのが一番だし、であるならメーカーが製造した新品の消火器に交換するのと変わらない話だ。新品の消火器が数千円で仕入れられるのに、1本あたり数万円かけて機能点検を実施する必要がどこにあるのか・・・。
私はこの機能点検を廃止して、外観点検を強化すればいいと考えている。
外観上少しでも錆が出てきたら不良。少しでも本体が変形したら不良。不良と判断された消火器は即交換とする。放射試験の必要性を考えるなら、抜き取りで放射試験を実施して再充填せず新品への交換を推奨すればいい。新品の消火器であることに越したことはないのだから、積極的に交換させるような法令に変えればいいと思う次第だ。
現在の法令による機能点検問題に対し、某メーカーでは時代に逆行した対応が始まったようである。それは蓄圧式から加圧式へのシフトである。加圧式であれば確かに機能点検は容易ではある。でもこれは消火器の破裂事故を受けたそもそもの法令改正の意図からは外れてしまうものだと思う。
消防点検が実施されていない建物、不具合の改修が進まない建物がまだ数多く存在する状況下で、残念ながら火災の被害が連日報道される現実がある。近未来の建物の建設が進む中、防災屋の数が圧倒的に足りない現実もある。そこに無資格者が増えて点検の質が低下し、施工不良が蔓延する一因もあるのではないか。
点検票が郵送可能になったのも最近の話。もっと無駄を省いて効率的に防災力を高められるよう法令が見直されていくことを期待したい。