マニアックコラム

2026.05.04

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消防設備の電源

電気が入って来る側を❝一次側❞、電気が出ていく側を❝二次側❞という。

消防設備の電源において、「一次側接続するように」と消防署からも指導される機会は多い。これらの多くは❝電気の主幹漏電ブレーカーの一次側❞を示している。では何故、一次側接続の必要があるのだろうか。

それは主幹漏電ブレーカーの二次側に接続した例を考えてみると分かりやすい。漏電ブレーカーはその名の通り、漏電が発生した際にその回路を遮断するもの。30mA程度の微弱な漏電を検知して、その二次側の電気を一旦遮断するのだ。その二次側に消防設備の電源ブレーカーがあったらどうだろうか。

次の写真は非常警報設備と誘導灯の電源が二次側接続されていた例。

お客様に説明するために漏電ブレーカーを動作させてみた。建物は停電し、一緒に非常警報設備と誘導灯がバッテリー状態に切り替わった。万が一、他の電気設備で漏電があってもこのように電源が落ちてしまうわけだ。

この現場では、専用のブレーカーボックスを新設して一次側接続へと改修した。

ただ、この一次側接続が必ずしも義務なのかというとそれも所轄消防によって指導が変わるようである。

以前、改修工事に入った店舗の消防検査では、元々二次側接続だったにも関わらず、その電源部をいじっていない私に是正指導がされた。と思えば、二次側接続だと確認したのに「あくまで一次側接続は義務ではなく指導なので」と是正指導をしなかった消防署もあった。何とも腑に落ちないと、ある時、東京消防庁予防課にこの件をどう指導しているか確認したことがある。東京管内では「主幹ブレーカーの一次側接続を指導している」との回答があった。主幹の漏電ブレーカーではなく、むしろアンペアブレーカーの一次側だとその方は言った。それは電力会社が嫌がるのではと思ったが、電力会社にもその理解・協力を求めていると。

なるほど。ここまで来ると、たとえ義務がなかったとしても一次側接続が当たり前に施工されるべき状況であることは頷ける。

 

とはいえ、電源部の不具合は後を絶たない。

先日施工したテナントビルでは消防設備の電源ブレーカーに他設備が接続されていた。❝専用回路ではない❞という不具合である。この電源を兼用してしまうパターンで言えば、誘導灯と非常照明を一緒にしてしまう例が非常に多い。誘導灯は電源が供給され続けるべき設備だが、非常照明は電源が遮断されて初めて点灯して機能するため、全く逆の電源取りが必要なのだ。それなのに誘導灯と同じ一次側接続として、建物が停電しても非常照明が点灯しない状態になっている現場は数多の数あるのだ。

そしてつい先日、さらに衝撃の現場に遭遇した。テナント内の誘導灯交換で電源を遮断したかったのだが、テナント内の分電盤の全てのブレーカーを遮断しても電源が切れず、共用部の分電盤の電源遮断も試したが切れることはなかった。そうなるとまさかだけど・・・「ブレーカー無しの一次側接続かもしれない・・・」・・・そのまさか。主幹の一次側を見てそれが現実にあることを知った。この現場では分電盤内の空いたスペースに急遽ブレーカーを設置させてもらう対応となった。

消防設備点検では、誘導灯が設置されていると建物内の共用分電盤やテナント内分電盤で電源の入切と絶縁測定を実施するはずなのだが、これらが気付かれずに放置された現実はそれがしっかり履行されていない事実をそのまま示すこととなった。

 

ちなみに消防設備の中で主幹ブレーカーの一次側接続をするよう明記されている設備があるが分かるだろうか。それは❝漏電火災警報器❞である。今では馴染みのない設備となってしまったが、ラス(鉄網)にモルタル塗りした建物では一定規模になると設置が必要な設備だった。ラス・モルタルは防火構造とするのに主流の施工方法だったようだ。建物の壁面等の下地にラスが入っており、そこをケーブルが貫通して建物内に電気を引き込むことになるのだが、万が一そのラスに漏電が発生すると、壁内のラスを熱が伝導して発火し、表面から煙が出るころには建物全体に火災が回ってしまう。ラスモルタル火災は甚大な被害を出す危険性があると言えるのである。そのため、建物に電気を引き込んでいる以上は漏電の可能性があるため、主幹ブレーカーの一次側に接続して、電気が通電されている限り警戒するよう規定されたものと推察する。

この漏電火災警報器、作動電流の設定は100mAなど、結構動作するための漏電電流値は大きい。前述したが、漏電ブレーカーの作動電流は30mAほど。もし仮に主幹漏電ブレーカーの二次側にこの漏電火災警報器が接続されていたら・・・もはや高性能な漏電ブレーカーによって働くことを許されず、存在意義を失った設備になってしまうかもしれない。

消防設備は人々の命を守る大切なもの。それを動かす電源はやはり、他の設備の影響を受けない❝一次側接続❞であるべきだろう。それも各消防署が統一した見解を示し、私たち消防設備士もその意向に沿って消防設備の❝ベストコンディション❞を維持したいものである。